創作の森に迷い込んだカエルの話

写真家、小説家などの創作活動にあこがれるカエルが、ふとしたきっかけで富士山の麓にある創作の森に迷い込んでしまったお話

超ショートショートの不思議な世界 副作用

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「副作用」

 

 先生、予想外に大変な検査結果です。
 この新薬、とんでもない副作用が現れます。
 副作用は治験者全員に確認されました。
 やはり販売申請は見合わせた方がよろしいかと。
 問題ないって、なぜです?
 先生、副作用を隠して売り出すのですか、そんな危険なことをしたら・・・。

 画期的な効果が期待できると評判の新薬が発売されてしばらく経つと、世の中は平和になり、幸せな家庭が増えていった。
 そう、新薬はストレスを緩和し、心を穏やかにする薬。
 研究開発者がかくにんした副作用は、人を愛する心を持つようになること。
 ストレスに満ち溢れていた世界から、争いごとや様々なハラスメントが消えていく。
 素晴らしい副作用だ。

超ショートショートの不思議な世界 スナイパー

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「スナイパー」

 

 新しい依頼だ。
 ターゲットは25歳の会社員男性。
 どこからどう見ても平凡な、どこでも見かけるような男だ。
 しかし、彼には悪いが依頼を引き受けた以上は仕方がない。
 俺の標的になってもらう。
 もちろん俺は、来た依頼を全て受けているわけではない。
 標的となる人物の事前調査はしっかり行って、受けるか否かを返事をしている。
 依頼を受けた場合は、俺の手によって必ず依頼された相手の心臓を撃ち抜かねばならないのだから。
 人の人生が関わっている。簡単に依頼を引き受けるわけにはいかないのだ。
 今回のターゲットは、調査の結果、ぜひとも俺の手によって仕留めなければならないと判断したのだ。
 俺は標的の心臓を、必ずワンチャンスで射貫く腕を持っている。
 今、その時が来た。
 歩いてきた標的の男の前から、依頼者の女性も歩いてくる。
 男と依頼者、すれ違う瞬間、俺はためらうことなく男の胸めがけて矢を放った。
 矢は寸分の狂いもなく男の胸に突き刺さる。
 その瞬間、男は俺の依頼者である女性に恋をした。
 そう、俺は凄腕の愛のキューピット。

超ショートショートの不思議な世界 同居人

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「同居人」

 

「ただいま」
 新しく引っ越した一人暮らしのマンションに帰る。
「おかえりなさい」
 と女性の声、気のせいだ。幻聴に決まっている。
 幽霊が出るということで、格安の家賃で借りることのできたマンション。
 しかし科学者の卵である俺は、科学的に証明できないことなど絶対に信用しない。
 もちろん幽霊の存在など認めることはできないのだ。
 机に向かってパソコン作業、ふと窓ガラスに目を移すと、俺の後ろに若い女性が立っている様子が映っている。
 幻覚だ、最近仕事のし過ぎで疲れているからこんなものが見えるのだ。
「疲れているのね、今日は早く寝たら」
 窓ガラスに映る女性が耳元でささやいた。ように聞こえた。
 確かに疲れている。
 幻聴も始まったことだし、疲れを取るために今日は寝るとしよう。
 このマンションに引っ越したと同時に仕事も忙しくなった。
その影響で、ストレスや疲労が重なって、幻覚や幻聴が頻繁に起こる。ここは思い切って休暇を取ってリフレッシュするとしよう。

「ただいま」
 彼が帰ってきた。
 今までの同居人と違って、彼は私を怖がらない。
 それどころか、頑なに無視を決め込んでいる。
 こうなったら私もしばらく無視してやろう。

 リフレッシュ効果だろうか、「おかえりなさい」という女性の声は聞こえなかった。
 夜、女性の幻覚も見えなくなった。
 どうしたことだろう、部屋がやけに広く寂しく感じる。
 これが当たり前の光景なのに。
 すでに俺には幻覚や幻聴で感じる女性の存在が不可欠なものになっていたのだろうか?

「あなた寂しいのね」
 彼の元気のない姿を見て、優しく声をかけてあげた。
 その時の彼の嬉しそうな顔っていったら、本当に可愛いんだから。
 こんなに幸せな気持ちって、今までに経験したことってあったかしら。

 それからまた、私たちの、俺たちの、愛に満たされた不思議で幸せな暮らしが始まった。

超ショートショートの不思議な世界 見た目以上に恐ろしい

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「見た目以上に恐ろしい」

 

 無限の宇宙を連想させる神秘な香り、コスミック・ローズ。
 新たに発売された香水です。
 人類が初めて到達した生命体が存在する惑星、しこから持ち帰ったバラから抽出したフレグランス。
 地球上の女性をあっという間に虜にしてしまった。
 しかしみなさん、地球上のバラとそっくりだったからって、バラだと思い込んでしまったのは間違いなのです。
 人類が持ち帰ったバラらしき生物は、実は恐ろしいものだったのです。
 その香りで獲物の感覚を麻痺させて、養分として体内にじっくりと取り組むのです。
 地球人の感覚では想像もできないくらいに恐ろしい生物なのに、香水として爆発的人気のコスミック・ローズ。
 地球では大人気で、栽培が盛んになってきた。

超ショートショートの不思議な世界 寿司ネタ

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「寿司ネタ」

 

 大将、この寿司うまいね。でもさ、このネタの魚って捕獲が禁止されているだろ。
 えっ、秘密のルートがあってそこから仕入れているの?
 秘密だよって、大丈夫、誰にも言いやしないよ。こんなに美味しいものが食べられるんだから。
 秘密の裏メニューがまだたくさんあるの?
 食べさせてよ。
 いやー、どれもこれも最高に美味いよ。
 捕獲禁止の天然記念物や絶滅危惧種ばかりだもんね、大将の仕入れルートはすごいんだね。
 とっておきがあるの?
 絶滅した魚で握った寿司だって?
 すごいネタだよそりゃー。
 大将、何を大笑いしているの?
 えええー、全部ウソだって?
 誰も食べたことない魚のネタだから、何出したって本当の味は分からないっていうの?
 参ったなー、すっかり引っかかっちまったよ。
 でもさ、そのネタ、バラしちゃっていいの?