創作の森に迷い込んだカエルの話

写真家、小説家などの創作活動にあこがれるカエルが、ふとしたきっかけで富士山の麓にある創作の森に迷い込んでしまったお話

超ショートショートの不思議な世界 宣戦布告

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「宣戦布告」 

 ついに人類は異星人の存在を突き止めた。

 巨大なパラボラアンテナが宇宙の果てから送られてきた規則的な信号をキャッチしたのだ。発信している星は数億光年かなたにあることが分かった。

 しかし、現在の科学ではその内容を判読することはできない。それでも科学者たちは返事を送ることにした。彼らの考えた友好的な信号を断続的に送ったのだ。

 そして数年後、規則的な信号を解読することに成功した科学者たちは青ざめた。

 解析した彼らの信号パターンを科学者たちが返信した信号に合わせてみると、友好的な内容どころか・・・

「やーいやーい屁のカッパ、悔しかったら攻めて来い」

 という内容になってしまうのだ。

 すでに信号は宇宙空間を相手の星に向かって突き進んでいる。

 さあどうする、科学者たちが送った返信が異星人のもとへ届くのが数億年後。そして彼らが地球に攻めてくるのは・・・。

超ショートショートの不思議な世界 幻のカレーパン

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「幻のカレーパン」 

 その店の名物カレーパン、店主の気まぐれで作るから、いつ店に並ぶかわからない。並んだとしてもあっという間に売り切れてしまう。

 カレーパンが好きな僕も一度は食べてみたいと恋焦がれているのだ。

 時には丸一日店の前で粘って待っていたこともあったが売り出されることはなかった。あと一人というところで売り切れてしまったこともあった。なんとしても手に入れたい。

 この店のカレーパンを手に入れたいと思って何年の月日が流れたことだろう。しかし、手に入る時は本当に一瞬なのだ。

 偶然その店の前を通りかかった時、店主が焼きたてのカレーパンをもって奥から出てくるのが目に入った。

 僕はついに幸運と巡り合った。ようやく手に入れた幻のカレーパン、天にも昇るこの気持ち。手にした瞬間からもう夢見心地。

 えっ、その味はどうだったかって?

 うーん、手に入れることだけで頭がいっぱいになっていたから記憶にないなぁ。

超ショートショートの不思議な世界 脱皮

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「脱皮」 

 子供の頃に遊んでいた公園を久しぶりに訪れてみた。

 こんなに狭かったんだ。記憶にある公園は探検するには最高の場所で、ジャングルジムやブランコ、大きな木も沢山あってとても広い場所だった。当時住んでいた家から一人でここに遊びに来るのにも遠いから勇気が必要だったのだが、今歩くとほんの一分しかかからない。

 心なしか公園の風景も色あせて見える。

 やっぱり子供っていうのは別の世界に生きている生き物なんだよな。

 僕たちの心は時の経過と共に脱皮を繰り返して少しずつ違う形へと変化して行くのだ。昔に戻ることはできない。

 今度僕の心が脱皮した時には、世界はどのように変わって見えるのだろう。

超ショートショートの不思議な世界 鏡の世界の自分

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「鏡の世界の自分」

  鏡の向こうの世界には僕の住むアパートの部屋が映っている。時刻は朝の6時、僕の姿はまだ見えない。あと少しすれば、寝ぼけ眼で鏡をのぞきにやって来るはずだ。

 きた、鏡の奥から僕が現れた。あれ、右目が真っ赤に充血しているぞ、これは想定外だ。でも時間がない、このまま演技するしかない。

 僕は鏡の向こうの僕の姿を忠実に鏡の中で再現する。歯を磨いて顔を洗って。目の充血だけは正確に映すことができず気になったが、大きな問題にはならないだろう。

 そうして鏡の向こうの世界の僕は部屋を出て行った。

 僕が会社から帰ってくるまでしばしの休憩。

 鏡っていうのも大変なんだよ。

超ショートショートの不思議な世界 メールの山

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「メールの山」 

 メールの山にうんざりだよ。

 スマホに毎日大量に届くメール、ほとんどがダイレクトメール。その山の中から必要なメールを探し出すのに一苦労。

 そんなことだから、問題のメールをすぐに見つけることができなかったんだ。

 未来の僕からの封書のメールがきて読んでみたら、不幸のチェーンメールに注意しろって書いてあった。

 そこでスマホの中の大量メールの山から不幸のチェーンメールをやっとの思いで見つけ出したのがついさっきさ。このメールを受け取って三日以内に3人以上に転送しないと不幸が訪れるって。

 でももう遅い、期限はとっくに過ぎてしまっている。

 問題の不幸って、もしかしたら階段踏み外して足をくじいたことかな。そうだとしたら、おかげで可愛い女の子と知り合えたんだし。

 そうだ、過去の自分にメールしておこう。不幸のチェーンメールに注意する必要はない、気にするなって。

 もちろん封書で送るよ、メールの山に埋もれて気が付かないと困るからね。こんな時代でも封書のメールは重宝するんだね。