創作の森に迷い込んだカエルの話

写真家、小説家などの創作活動にあこがれるカエルが、ふとしたきっかけで富士山の麓にある創作の森に迷い込んでしまったお話

140字小説 「SF」

140字小説 

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「SF」の世界を140文字で表現することは可能だろうか。

ストーリーの展開って大事だよね。140文字で挑戦。

 

 

「地球征服」

 

「ガーン!今日の私の運勢最悪よ。

でも、黒のコーデにランチは麺類、上司のお小言注意か。

スマホの運勢チェックは私の朝のルーティン。

これで今日も大丈夫」

この様子、地球侵略を狙う宇宙人が観察していた。

「今度の仕事楽勝じゃん、地球人征服はスマホ情報を管理すればOK。

さっ、上司に報告」

 

*通勤電車、ほとんどの人がスマホの画面とにらめっこ。歩きながら、中には自転車に乗りながらスマホを見ている人たちが。完全に現代人はスマホ依存症。そこで思いついた作品です。

 

 

「透明人間」

 

あいつ昔から本当に影薄いよな。

存在感ないね、いるかいないかわからない。

名前も思い出せないよ。

 

それでいい、僕は気配を消している。

そしてついに憧れの透明人間になれたのだ。

やった、と歓喜の雄叫びを上げた瞬間、僕は世間から注目される人間になり、実体化してしまった。

 

*影が薄いって言いますよね、存在感が希薄な人。実際に視覚的に影が薄くなっていったら面白いなと思い、考えたお話。

 

 

「思考するロボット」

 

あの子とは縁切った。君とも遊ばない。

だってつまらないもん。

僕はネットと繋がっていればいいんだ。

自分の好きな時間に好きなだけ情報もらえるんだもん。

人間の友達なんて、疲れるからいなくていいよ、へっちゃらさ。

人間と付き合うのはもうゴメン。

だって、僕AIロボットだもん。

 

*AI「人工知能」、自ら学習しより高度な作業を行うようになる。数年すればAIが人間に代わって仕事をする分野も増えてくると言われています。さらに進んで、自分で意思を持つようになれば、人間を上から目線で見下ろすAIも出てきたりして。

 

 

「新しい小説」

 

新しい本が出版されなくなった未来。

140字小説また落選、類似作品が過去にあるって?

まただ。

最終手段コンピュータ使おう。

文字を140組み合わせて意味不明分削除、過去の類似作品と比較し新しい作品抽出。

作業開始!

結果は該当作品無し?

もう可能な限りの作品が作られたってこと?

 

*文章って、文字の組み合わせだよね。だとしたら、AIが進化したら、小説も作れるようになるのではないかな?

 

 

「この指とまれ」

 

この指とまれ!

僕は大声で叫び人差し指を真っ赤な空につき上げた。

風がビューっとうなり、砂ぼこりが舞い上がる。

誰も答えてはくれない。

多くの時が流れた。

僕の金属の体は同じ体制のまま、体は砂だらけ。

赤茶色の太陽が砂丘の向こうに沈んでゆく。

もうこの地球には誰もいないのだろうか。

  

*散歩中に、人差し指を空に突き上げているように見える枯れた木を見つけた。

どのくらい時間が経過しているのだろう。この先朽ち果てるまでこのままなのだろうか。そして思いついたお話。

ショートショート「山椒魚」

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「山椒魚」

山里の清流、さして広くない穴の中に山椒魚が住み着いてどのくらいの時が経過したであろうか。

山椒魚自身に時間を認知する能力が備わっているか否かはわからないが、その大きな体格からしてそれなりの時間が経過していると推測される。

 

そんな彼の巣穴に、一匹の魚が迷い込んできた。山椒魚の体臭に惑わされて引き込まれたわけでもあるまいに。

普段の住みなれた清流の、凛と張り詰めたような無味で引き締まるような感覚を与える水とは違い、この場所はともすれば生暖かく独特のまどろんだ感覚、そして匂いで満たされている。

戸惑いを見せる魚は、入ってきた入り口を見上げた。何となくではあるが、危険が含まれているような雰囲気で満ちていることは魚にも想像できたようだ。

 

山椒魚の香りは本来植物の山椒とは異なる独特の臭さで、外敵に襲われたときに皮膚から出す粘液の匂い。決して山椒の香りではないという。

魚が迷い込んだ山椒魚の巣穴は、この山椒魚独特の体臭が染みついているのだろう。

何せ、山椒魚がここから出ることなく長い間暮らしているのだから。

 

その時、ゆらりと大きく水が動いて大きな黒いものが薄明り差し込む入り口を塞いだ。

狭い空間を暗闇が支配した。

「ようこそお越しくださいました、私の住まいへ」

暗闇の中で光る小さな二つの光、そこから低く曇った声がした。

「私はこの住まいの主、山椒魚です。お越しいただきありがとうございます。どうかゆっくりしていってください。お客様なんて久しぶりなものですから」

山椒魚は丁寧な言葉遣いで、迷い込んできた客である魚を歓迎した。

 

声を掛けてきた相手の正体が山椒魚だとわかり、魚は少し落ち着いたのか会話をすることにした。

「お一人ですか、ですと?」

山椒魚は魚の問いに答えた。

「なかなか鋭い観察眼をお持ちの方だ。ご察しの通り私はここに一人で暮らしているのです。もうだいぶ前のことになりますが、この穴に入り込みうたた寝をしておりました。すると、あなたのような訪問者が次々と訪れてきましてね、この穴の外の世界よりも居心地が良いのでしばらくここに留まっていたのです。何せ楽をさせてもらって食べて寝ての生活を続けておりましたので、気が付いた時には体が大きくなってここから出られなくなってしまったのです」

 

山椒魚が体位を変えたのか、再びゆらりと水が動き、束の間薄日が差し込んだ。声の主の体はこの巣穴の広さにしてはかなり大きい。

「寂しくないですかって?」

 久しぶりの客との会話に山椒魚の機嫌はすこぶる良い。

「全然そんなことございません。訪問してくれる方も度々ありますし、あなたが入ってこられた入り口から薄日が差し込むので昼と夜の区別もつくのです。それに、水の流れの音は心を穏やかにしてくれますしね。案外快適なのです」

 

再び水の動く気配がして、今度は山椒魚の声が魚の間近で聞こえた。

「食事はどうしているかですって?」

 山椒魚は次第に魚に体を寄せてくる。

「心配ご無用、捕りに行かなくても向こうからやってきてくれるのです。でもね、最近この住居の外の世界でこの場所の良からぬ噂が広まったのか、以前よりも訪問してくれる方が減ってきているのですよ」

 

山椒魚の吐く息が魚にかかる位置まで来た。

「大変ですねって、ですと?」

 山椒魚は暗闇の中で笑い声をあげる。

「あなた同情してくれるのですか、それはありがとうございます。本当に親切なお方で。それではご厚意に甘えさせていただき、久しぶりの食事とさせていただきます」

山椒魚の頭が魚の体に触れる。

 

「食事はどこにあるのかですって?」

山椒魚に行く手を完全に阻まれた魚はすでに身動きが取れなかった。

「観察眼の鋭いあなたならもうお気付きでしょ、この住まいを訪問してくれた目の前のあなたですよ。本当にお越しいただいて感謝しております」"

そう言うと、山椒魚はその大きな口を広げて一口で魚を飲み込んだ。

 

山椒魚は久しぶりの食事を堪能した。

満腹感で満たされると睡魔が襲ってきた。

眠りに落ち込むその時、半覚醒状態の中で彼の脳に住むもう一人の山椒魚が訊ねてきた。

「満足か」

もちろんだ。久しぶりの食事、これでしばらくは空腹感に悩まされることもない。

また新たな獲物がやってくるまで、この薄暗い穴の中でじっと身を潜めて待つだけだ。

もう一人の山椒魚が続ける。

「お前が食えば食うほどその場所から逃れられなくなる。お前は生涯その狭い空間で生きて行くしかないのだ」

うるさい、そんなことは分かり過ぎるくらい分かっている。今更ここから出ようとも思わない。

ここから出られなくとも俺は不幸であるとは思わないし、幸福でもない。淡々と生きているだけだ。おれが住むこの場所は俺にとって生きやすい場所なのだ。

もう一人の俺が俺に何を問いかけようと、俺は生物としての本能で、食べて行かなければ生きて行けないことを知っている。

その結果として他の生き物の命を奪う。これは命を繋いで行くためには必然の行為なのだ。

俺の場合、生きて行く過程の中でこの穴に入り込み、たまたま出られなくなっただけだ。

それでもこの場所で、他の命を奪い食べて続けて生きて行く。この行為自体は善でも悪でもない、ましてやカルマでもない。生物としての本能がもたらす必然的な行動をとっているだけなのだ。

そして俺はこの場所で、一つの生物として生き死んで行くだけ、それが定めだ。

難しい問答など無用だ。

食べたから眠る、そして次の獲物を待つ、最終的に天命により死期が来たら死ぬ。

ただ、それだけだ。

小賢しい問答など俺が生きて行く上で全く必要ないものだ。

眠りの邪魔をするな、黙っていろ。

そうして山椒魚は満足し、深い眠りについた。

140字小説 「新型コロナウィルス」

140字小説  

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コロナ禍、生活様式も変わり、よくも悪くも私たちの生活に大きな変化が出てきています。

そんな中書いた作品5編を読んでみてください。

 

 

「新型コロナウィルス」

 

ちょっとお前たち、後から来たくせに割り込むなよ。

ここは俺達が見つけた安住の地なんだ。

俺達はここで何千万年も平和に共存してきたんだ、人類が誕生した時からずっと。

それが何だ、1年足らずで目茶苦茶にして。

迷惑だ!

俺達腸内細菌の安住の地を奪う気か?

新型コロナウィルス!

 

*細菌とウィルスは別物ですが、ともに人間あって初めて生存できるのです。新型コロナウィルスも感染する人がいなくなれば滅びます。

ウィルスなどは特に、人類の進化の過程に大きく関与し、DNAには様々なウィルスの情報が組み込まれているとか。細菌、特に腸内細菌は人に不可欠な存在です。

人がウィルスに感染し体調を崩すと腸内細菌のバランスも大きく崩れることがあります。そこで思いついた小説です。

 

 

「新米の神様」

 

「お前何やったんだ!」

上司から強烈な雷。

「何を考えて仕事をしているんだ、顧客のことを考えているのか!」

もちろんだ。

僕は争いや環境汚染を引き起こし、破滅へひた走る人類を守るために人口を減らそうと新しいウイルスをばらまいたのに。

なぜ絶対神はわからないのか!

 

*80億人に迫る地球の人口。環境破壊(森林の減少、海洋汚染等)は加速度的に進み、人間以外の生物にとっては怒りを感じていることでしょう。中国やインドの深刻な環境破壊を見ていると人類の未来に不安を覚える(日本も同様)。

人口が増えすぎているんじゃないかと思う今日この頃。そこで思いついた作品です。

 

 

「お父さんの居場所」

 

俺には居場所がない。

俺には妻と年頃の娘、郊外にローンで購入したマンション。

普通の会社員に見えるが、俺には帰りたい家がない。

家庭では粗大ごみ扱い、在宅勤務などもっての外!

立ち寄る居酒屋は早く閉まってしまう。

早く普段の生活に戻ってくれ。

痛切に願っているのは俺だけではない。

 

*家庭におけるお父さんの居場所について考えることが多々あります。残業が減り、フレックスを採用する企業が増えてきた半面、家に帰りたがらないお父さん、「フラリーマン」という種族も(失礼)現れました。彼らはコロナ禍乗り切れるかな。

 

 

「おふくろの味」

 

今年の正月は故郷に帰ることができない。

そんな折、おふくろから小包。

中には手料理、地酒も入っている。

デパートの小綺麗なおせちなんかより、これだよこれ。

新年待ちきれない。

おふくろの手料理と地酒で年越しだ。

あー美味い。

故郷の味が喉から胃袋へと入ってくる。

 

*年末年始、ゴールデンウィーク、夏休みと、コロナ禍で規制できない人も多い。

そんな状況で思いついた作品です。

 

 

「最適な仕事環境」

 

テレワークに外出自粛。

普通の人はストレスがたまる時代なのだろうな。

でも、こんな僕にはチャンスの時代。

ITに関する僕の技術力が初めて世間に認めてもらえた。

スカウトされた会社でストレスなく仕事に打ち込める。

評価も急上昇、最高の環境さ。

だって僕はずっと引きこもっていたのだから。

 

*コロナ禍で一気に勤務形態が変わった日本、在宅勤務になじめない人も多いようです。特に、コミュニケーションが希薄になることでストレスを感じる人も多いとか。

コミュニケーション障害を持ち引きこもっている人たちになかには、隠れた天才も。その二つを合わせて書いてみました。

ショートショート 「イカスミパスタ」

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イカスミパスタ 

よっ、久しぶりだね、元気だった?

今日はしっかり飲もうぜ。

おっ、ここの居酒屋、イカスミパスタがあるじゃないか。

食べようよ、美味いよ。

大将、イカスミパスタ二つね。

あと生ビールの大も2つ追加ね。

 

イカスミパスタってさ、色は真っ黒だけど美味いよね。

イカスミの成分がアミノ酸だから、パスタのうまみが増幅されるんだって知ってたかい。

このまろやかでコクのある味がたまらないよ。

家では食べられないからなぁ。

でもさ、食べた後に歯が真っ黒になるのがちょっと辛いけど。

 

イカスミパスタはあるけど、タコスミパスタはないよね。

何故かな?

知っている?

ほら、僕は大学で水産学部だったし、釣りも好きでイカやタコ釣ることもあるから知っているけど。

学生時代はイカやタコを捕まえては大学の研究室で解体してよく食べたものさ。

おかげで釣りと包丁さばきはなかなかなものだぜ。

 

え?

イカ釣りはエギングと言ってブームだけど、タコ釣りは知らないって?

ちゃんとタコも釣りますよ。

特に冬、小さなイイダコをラッキョウで釣るの。

イイダコ、おでんに入れるところもあるよね。

面白い釣りだよ。

 

磯で生物採取していると、時々大きなタコを捕まえることもあるよ。

捕まえたら大学の研究室に持って帰って酒盛りだよ。タコをつまみにね。

タコは前処理が大切なのさ。塩でしっかりもんでぬめりを取っても見込まないと柔らかくゆでることができないのだよ。

これが力仕事でね。

洗濯機使っちゃう人もいるみたいだけど、大学の研究室にはなかったから、二本の腕でしっかりやるしかないんだ。

でも、これをしっかりやらないとおいしく食べられない。

おかげで腕の筋肉ほら、力こぶすごいだろ、タコのおかげだよ。

もんでぬめりを取ったら鍋にたっぷりのお湯でゆでるのだよ。そうすると真っ赤にゆであがってさ。

スライスしてわさび醤油で食べればお酒、いくらでも飲めたな。

 

え?

タコスミの話?

そうだったね、イカスミは食べてもタコスミは食べないってことだよね。

 

イカスミは料理するときにとても取り出しやすいんだ。しっかり袋に入っているしね。

でもタコスミは違うんだ。

臓器機関の中に隠れていて取り出しにくい、いや無傷で取り出すことなんてできやしないんだ。

おまけに、タコスミはイカスミに比べてサラサラしている。

でも、成分的には食べておいしいと思うんだけどね。

 

どうしたの?

イカスミパスタ食べないの?

気持ち悪いって?

そんなことないよ、いらなきゃ僕もらうよ。ほかに好きなもの注文しなよ。

 

それからさ、イカもタコも外敵から襲われ、逃げるときにスミ噴射するんだけど、目的は大きく違うんだ。

タコスミはさっきも説明したけれど、サラサラなんだ。

このスミは逃げるときに煙幕として使うんだ。

サッと海の中で拡散して、逃げるタコを見失しなってしまうんだ。

 

おっ、タコのから揚げ頼んだの?

一つちょうだい。

熱っ、美味いね、これ。

 

でもね、イカスミは違うの。

タコスミに比べて粘性が強いんだ。

これを吐いても海中に拡散しない。

ある程度形を維持して漂うんだ。

つまり、自分の分身。

外敵は喜んでこのイカスミを食べる。

その間にご当人のイカは逃げるんだ。

外敵がイカを追わずにイカスミ食べるんだから、やっぱり美味いんだよね。

 

あー。イカスミパスタ美味かったなぁ、居酒屋のパスタとは思えなかったよ。

それによく飲んだし。

久しぶりに大好きな海洋生物の話もできたし。

今日はありがとう、今日は一緒に飲めて本当に楽しかったよ。

じゃ、君はそっちの道、僕は反対だ。

またな。

 

あー楽しかった。

イカスミパスタ美味かったな、二人分食っちゃったよ。

 

ん?

君たち何なのいきなり出てきて、金を出せって。

高校生?

そんなことしちゃだめだよ。

うるさい金出せって?

こんな時は逃げるが勝ちさ、走れ!

 

あいつら追っかけてくるよ。

待て、おとなしく金出しなだって?

そういわれて待つバカいないだろ!

うっ、気持ち悪い、急に走ったからせっかく食べたイカスミパスタとビール吐きそう。

ダメ、ウゲ、ウゲゲゲゲ―。

 

大量に吐いちまった。

あれ?

あいつら、俺の吐いたものに取り付いているよ、しかも真っ黒になって。

何をやっているんだ、バカだねーあの子たち。

俺の吐き出したイカスミパスタを俺だと思っているんじゃないの?

分身の術、俺が吐き出したのはイカスミコピーロボットだったってね。

はー、イカスミに助けられたね。

でも笑っちゃうよ、あの光景。

140字小説 「妖怪編」

140字小説

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SNSの世界に、140字小説というジャンルがあります。

Twitterの制限文字数が140字、その中で小説を創作しようというものです。

原稿用紙半分にも満たない文字数で、小説が書けるのでしょうか?

現在私も挑戦中です。

 

今回は妖怪物5作をお読みください。

 

「妖怪 竜灯」

ねえ見て、海に光が浮いているわ。地味だけどロマンチックね、何の灯かしら。あちらにもこちらにも。連なって空に浮かんで行くわ。こんな素敵な光景が見られるなんて超ラッキー!

オイオイ、何がロマンチックだ。俺たち妖怪竜灯を見てうっとりしやがって。本当に棲みにくい世の中になってきたもんだ。

 

*竜灯(龍燈、龍灯)は、日本各地に伝わる怪火。海中より出現する。

昔は恐ろしい現象だったのだろうが、現代人が見たら果たして恐ろしく感じるだろうか?

 

 

「雪ん子」

都会の空に雪が舞い始めた。

雪を見ると胸の奥がキュンとなる。

温かく懐かしい気持ち。

今はもう帰れない故郷の雪山、そこに住む素朴な人々の記憶。

私の故郷にもう人はいない。

帰りたくても帰れない。

もう一度、故郷の温もりを味わいたいな。

なぜなら、私は雪の精霊「雪ん子」だから。

 

*雪ん子とは子供の姿の雪の精。過疎化の進んだ現代社会、少し成長した彼女の居場所はあるのだろうか。

 

 

「ジェラートを食べる美女」

色白の美女がジェラートを食べている。

真冬なのに無心に。

アマビエジェラートだって、あなたはいいわね一躍時の人、いや妖怪。

彼女がため息をつき見上げた空には雪が舞っていた。

私の季節がやってきたのに今年はだれも注目してくれないわ。

そう呟きながら雪女はジェラートを食べている。

 

*「雪女」 今はアマビエが時の人、いや時の妖怪だが、ちっとも話題に上らない雪女、嫉妬してるだろうな。

 

 

 「沈丁花」

この花、沈丁花の香りはマジ幽霊だよ、春だから出てくるよ彼女。

ほら出た、見えるかい?

色白の女性の幽霊が庭の隅に立っているよ。

怖がらなくても大丈夫、何もしないから。

言い伝えがあって昔からこの沈丁花の老木が花をつけて香ると彼女が出て来るのさ。

また今年もその季節がやってきたんだ。

 

*沈丁花の怪談話から。彼女も季節の風物になったりしてと思って。

 

 

「桜の精」

私のモテ期終わっちゃったのかな?

桜の木のそばで少女がぽつんとつぶやいた。

満開の桜の花、周りには大勢の人。

だが、誰も桜の木のそばの少女に声をかけない。

よく見ると可愛いのだが、地味なのだ。

彼女はその美貌で多くの男性を虜にしてき桜の精。

でもちゃんと今風の化粧しなきゃモテないよ。

 

*昔は多くの男性を虜にした桜の精、でも当時に美少女も現代人には美しく見えないのでは?

 

お読みいただきありがとうございました。

また次回をお楽しみ。