創作の森に迷い込んだカエルの話

写真家、小説家などの創作活動にあこがれるカエルが、ふとしたきっかけで富士山の麓にある創作の森に迷い込んでしまったお話

超ショートショートの不思議な世界 個性の時代

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「個性の時代」

 ある朝起きてみると、僕に尻尾がはえていた。
 狐のしっぽみたいに茶色く太い尻尾だ。
 ズボンがかなり窮屈だったけど、尻尾がはえちゃったのだから仕方がないか。
 街に出ると、こんな現象は僕にだけ起こったわけではないようだ。
 像みたいな耳がはえている人、昆虫のように六本の手足を持った人、魚の尾びれをお尻から出している人。
 みんな大変そうだな。
 それからは人間の体の変化は頻繁に起こるようになっていった。
 今では僕には九本の尻尾がはえている。
 しかしそんなことは気にならないし、隠す必要もない。
 だって現代は個性の多様化が重視される時代、人と同じじゃつまらないでしょ。

超ショートショートの不思議な世界 巨大遺跡は

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「巨大遺跡は」

 古墳ブームだ。
 仁徳天皇量が世界遺産に登録された。
 前方後円墳、このように美しく巨大な古墳が大昔に作られていたなんて。
 日本の古墳だけではない。エジプトのピラミッドやナスカの地上絵など、昔の人はどうやって作り出したのだろう。
 本当のことを教えてあげましょう。
 太古のロマンという人も多いけれど、実は地球は一つの巨大なリモコンスイッチ。
 前方後円墳は鍵穴で、リモコンのセキュリティを解除する際に使われる。ナスカの地上絵は、ほらリモコンにチャンネルや電源なんていう文字が書いてあるでしょ、あれなんです。
 各地の巨大遺跡は押しボタン。
 いま、誰かがこのリモコンを操作しようとしているのです。
 空を見上げてみてください、巨大な手が近づいてくるのが見えるから。

超ショートショートの不思議な世界 新しい惑星

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「新しい惑星」
 この惑星で確認された大きな噴火口から、マグマと思しき液体が大量に噴出されるのが確認された。
 規則的に、一定の期間で大量に宇宙空間まで噴出される。
 噴火口の反対側にある地表に確認された巨大なクレバスにも、これまた定期的に巨大な隕石らしい物体が宇宙空間から現れては吸い込まれていく。
 新たに発見されたこの宇宙空間には、巨大な太陽を中心として、その周りをこれと同じような惑星が無数に回っている。
 この空間を発見し、観測を始めた科学者たちは思った。
 本当に不思議な天体だ。
 天体だって?
 宇宙空間には、人類が想像もつかないような空間が幾多も存在するのだ。
 突拍子もないことに、この惑星たち一つ一つが巨大な生命体、噴火口に見えるのは肛門で、クレバスだと思い込んでいる部分は口なのだ。
 観測を続ける人類は、その事実を全く理解することができない。

超ショートショートの不思議な世界 見なかったことに

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「見なかったことに」

 突然、ガツンという衝撃が僕の体に走った。
 そして地面にたたきつけられる。
 キャーという悲鳴が周囲から聞こえる。
 どうやら僕は、信号無視をしてきた車に跳ね飛ばされたらしい。
 僕にぶつかった車はフロントが大きくへこんでいる。
 若い男が青ざめた顔で運転席から降りてくる。
 この状況はまずい、僕は急いで自分の体を点検した。
 右腕の皮膚が大きくはがれている。
 持っていたハンカチで、急いでその部分を隠す。
 そして大声で周りの人たちに叫んだ。
「僕は大丈夫、今のは見なかったことにしておいて」
 そういって、駆け足でその場を離れた。
 危ないところだった、危うく僕が人間界に送り込まれたロボットだってばれてしまうところだった。
 はがれた皮膚から覗く腕のパーツを見ながら冷や汗をぬぐった。
 世の中には数多く、同じような光景を目撃した人がいるんじゃないかな。
 ロボットは僕一台だけではないのだから。

超ショートショートの不思議な世界 七夕の空

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「七夕の空」

「ママ、天の川きれいね」
 七夕の夜、私は娘と二人で夜空を見上げていた。
「織姫様と彦星様のお星はどこかな」
 娘は夢中になって夜空を眺めている。
「あっ、流れ星だ」
 長い尾を引いて夜空を流れ星が横切った。
「お星さまきれいだねー、毎日こんな夜空見られたらいいのになぁ」
 そう、今日の夜空は七夕の日限定の特別企画なのだ。
 私たち親子の住む地下都市では、実際の夜空など見ることはできない。
 私が幼いころに勃発した最終戦争で使用された多くの核兵器の影響で、地表は放射能で汚染されつくしてしまったからだ。
 生き残った人類は、各地に巨大な地下都市を建設して避難生活せざる負えなくなってしまった。
 地表の除染が終了して、自然環境が元に戻るまで。
 それには途方もなく長い時間が必要だ。おそらく娘が本当の夜空を見ることはないだろう。娘の子供も、またその子供も。
 地球上で以前と同じ夜空を見ることができるのは、気の遠くなる未来の話だ。