ショートショート・短編小説
僕は不器用だ。 手先だけではなく、生きる事全てにおいて不器用なのだ。 こんな不器用な人間を僕は知らない。 不器用な僕の一日はこうして始まる。 朝は早い。 家族で一番早く起きる。 朝、まず行うことはお湯を沸かしてコーヒーを入れることだ。 そして朝ご…
この前、「お父さんは何歳まで働き続けるのか」という記事を書きました。 その時にふと頭をよぎったことを、ショート・ショートとして書いてみました。 お読みいただければ。 www.enjoylife-masa.com 「超高齢化社会とロボットスーツ」 僕の勤務する老人介護…
「怖くてたまらない」 友は病院のベッドに目を閉じて横たわっていた。 その姿は見るからにやつれていた。 様々な医療を、最高の医療を施したのだが、彼は病魔に打ち勝つ事は出来なかった。 彼の短すぎる人生の幕が下りるのは、時間の問題であることに疑いは…
はじめに 10月に投稿した短編小説「幸せを呼ぶ猫」を修正しました。 タイトルは「黒猫と僕の不思議な関係」 短編小説なので、タイトルで結末が分かる事を避けたのです。 主人公も「俺」から「僕」へ。 イメージを柔らかくしたかったのです。 文字数も約170…
「5秒ルールの悲劇」 今までの僕の人生は、不完全燃焼そのものだった。やらなければならないこと、やろうと思っていたことは沢山あった。でも、もう少し、もう少し経ったら動こうと先延ばしにする癖があり、結局はやらずじまい。 先延ばしにする口実を考えつ…
ショートショートと短編小説は違うのか 最近小説めいたものを書き始めて思った疑問 ショートショート 短編小説 自分の解釈 長さだけではなく、内容についても区別されている? もともとショートショートの発祥はアメリカ 結局は自分で判断すべきだと 最近小…
お父さんは居場所がなかった。 10年前に35年ローンで購入した、3LDKの狭いマンション。 妻と娘二人の家族四人。 子供が大きく成れば、必然的にお父さんの居場所がなくなる。 「俺だって居場所が欲しい」 子供は娘二人だから、いずれは巣立つだろう。 そ…
風雨が次第に強くなってきた。 屋根として使っている ブルーシートがバタバタと大きな音を立ててはためいている。 もはや屋根の役目ははたしていない。 ビニールの半透明のカッパを身に付けているが、もちろん俺は全身ずぶぬれである。 今朝方 NPO だと名乗…
「イノシシの思い」 僕の右足がガクンと引っ張られ、鈍い痛みが走った。 お母さんや兄弟たちが、立ち止まって僕を見ている。 早く家族のところに追いつかなくちゃ。 でも、焦れば焦るほど右足の痛みは強くなる。 引っ張られて前に進めない。 「どうしたんだ…
晩秋の森は夕暮れを向かえていた。 空は藍色を濃くし始めている。 気温も下がり、濡れた衣服から急激に体温を奪い始めた。 私は今年デビューしたばかりの新米猟師だ。 とは言っても、免許を取ったばかりのという意味で。 都会暮らしの私にとって、猟師は大自…
私は人生最大のピンチに直面していた。今まですべてがうまくいっていた私の人生の中で、最大のピンチ。どうやって切り抜ける? 私は美人、それも自他共に認める美貌の持ち主。 原宿や渋谷でスカウトされたことも何回か経験しているの。この美貌は私に常に幸…
「まただ、また失敗してしまった」 地球の「意思」がそうつぶやいた。 地球の「意思」は深く落胆してしまったのだ。 それも、再び・・・ 北の指導者は妄想と現実の区別がつかなくなっていた。 自分の権力は絶対的であると信じて疑わないのだ。 彼は、この地…
俺は新しいカメラを手に入れ、喜び勇んで撮影に出かけた。 富士山麓の森の中で、苔を撮影しようと思ったのである。 新しいカメラは、マクロレンズ顕微鏡モードが売りである。 趣味の苔の撮影には最高のカメラだと思っている。 目的の場所に到着し、車を停め…
俺は、就職して今まで15年間、毎回欠かさず同じ数字でロト6を買い続けている。 もちろん1000円しか当たったことは無いのだが、これだけ長く買い続けていると、この行為は人生の一部となり、買わないわけにはいかなくなってしまっている。 そして、土曜日。 5…
お父さんは孤独だった。 子供たちはすでに成人して巣立っていった。 カルチャースクールや様々なサークル活動に精を出しているお母さんとは、今はもうほとんど会話がない。 仕事一筋だったお父さんには、心を許し話し合える相手がいなかった。 そしてお父さ…
私はどうしても結婚したかった。 しかし、私には結婚に対して大きな障害がある。 一つ目は、私が歳をとっている事。 二つ目は、私のスタイルがこの時代には受け入れられないこと。 三つ目は、男性の絶対数が少ないことだ。 でも、私は結婚をあきらめたくなか…
俺はまた今朝も自分の気持ちと戦っていた。 起きて会社に行くか、このままベッドの中で寝てしまうか。 俺は会社が嫌いである。 仕事なんか大っ嫌いだ。 だから、毎朝起きる時間が近づくと憂鬱になってしまう。 会社に行きたくない行きたくない。 すでにカー…
その感情は突然湧き上がってきた。 水曜日、仕事を終えて会社を出た時だった。 外は蒸し暑かった。 こんな時は、キンキンに冷えたビールが飲みたくなるものだが、その日、お父さんの頭の中に湧き上がった感情は 「せんべいが食べたい」 であった。 その感情…