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いつもの風景 【短編小説】

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俺はまた今朝も自分の気持ちと戦っていた。

 

起きて会社に行くか、このままベッドの中で寝てしまうか。

 

 俺は会社が嫌いである。

 仕事なんか大っ嫌いだ。

 

だから、毎朝起きる時間が近づくと憂鬱になってしまう。

 

会社に行きたくない行きたくない。

 

 すでにカーテンの隙間から、朝日が部屋に差し込んでいた。

 スマホのアラームが鳴るのももうすぐだ。

 

だが、俺は今日もまた普段通りにいやいやベッドから抜け出し、会社に向かうのだった。

 

重い足取りで駅に向かう。

そして改札を抜け階段を上がろうとしたときに気が付いた。

いつも利用する1番線のホームの横に0番線があるではないか。

 0番線 こんなホームこのここの駅にあったのだろうか ?

まるでハリー・ポッターの世界じゃないか。

 

俺はフラフラと、まるで吸い寄せられるように0番線へ向かう階段を上っていった。

 

すると、そこには既に列車が到着していた。

 

俺は何の疑問もなく、電車のドアに吸い込まれていった。

 

車内は思いのほか空いていた。

俺はシートに座る。

目の前には若い OL 風の女性と、くたびれたスーツに身を包んだおじさんが座っていた。

2人とも無表情で、顔色が冴えない。ぼんやりとした視線を宙に漂わせている。

 

列車はアナウンスも発車ベルも無く走り出した。

 

見慣れた街の風景はあっという間に消え去った。

 

そしてすぐに田舎の漁師町が現れた。

朝日を受けて海がキラキラと輝いている。

すると目の前のおじさんが急に立ち上がり、大声で叫んだ。

 

「ここだ、ここが俺が探していた場所だ。俺はここで漁師をやりたかったんだ」

 

そう言っておじさんの姿は消えた。

 

その後、車窓の風景は劇的に変わった。

地中海に面した明るい街の風景が広がった。

すると今度は目の前の OL は立ち上がって

「私の住みたかったところはここなのよ」

と言って消えた。

 

その後も様々な風景の中を列車は走り続け、乗客は一人一人と消えていった。

 

そして最後に私が残ったその途端、列車窓の風景は消えた。

列車は漆黒の闇に包まれた世界を走っている。

全く窓の外の風景は見えない。

 

一体どうしたというんだ。

俺は考えた。

 

そうか、俺はただ単に仕事が嫌だ会社が嫌だと言っているだけで、人生に対して何の夢も持っていなかったんだ。

だから何も風景が見えないんだ。

 

俺は焦った。

この列車は俺を乗せたまま、この漆黒の闇を永遠に走り続けるのであろうか。

 

俺は叫んだ。

 

「やめてくれ、元の世界に戻してくれ」

 

スマホのアラームが鳴っている。

 

俺は目を開けた。

起きる時間だった。

 

寝汗でパジャマ代わりの古いTシャツがぐっしょりと濡れている。

夢だったのか。

俺はため息をつき、スーツに着替え重い足取りで家を出た。

 

そしていつもの通り駅に向かう。

だがその時俺は思った。

もしかしたらあれは現実に起こったことなのではないだろうか。

 

最後に、不安になって元の世界に戻りたいと叫んだ。

そして俺の望んだこの風景に結局は戻ったのではないだろうか。

 

怠慢な人生を過ごすのはもうやめよう。

もっと真面目に自分の人生を考えよう。

俺はそう思って駅に向かった。

 

いつもと同じ風景が、少し明るく感じられた。