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5秒ルールの悲劇 【ショートショート 短編小説】

「5秒ルールの悲劇」

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今までの僕の人生は、不完全燃焼そのものだった。
やらなければならないこと、やろうと思っていたことは沢山あった。
でも、もう少し、もう少し経ったら動こうと先延ばしにする癖があり、結局はやらずじまい。

先延ばしにする口実を考えつつ生活をしていた。
日々だらだらと、それこそ無意味に過ごしてきたのだった。

そんな僕だから、勉強なんかできるわけがなかった。
趣味だってないし、彼女どころか友達だって出来なかった。
三流大学に何とか引っ掛かって、一年留年しただけで卒業し、ほとんど名前の知られていない今の会社にもぐり込んで、たとえ安い殿給料でも、サラリーマンを続けているのが奇跡といえるだろう。
ある意味、僕の人生はついているのかもしれない


だが、そんな僕のつきもここまでだった。
会社が倒産してしまったのだ。
同僚達はいち早く行動を起こし、次々と新たな仕事を見つけていった。

僕はというと、仕事を探さなければいけない事はわかっているのだか、いつもの習慣で明日になったら動こうと毎日思っているうちに、失業保険も切れる日がやってきてしまった。

そんなある日、母方の高校教師をやっている口うるさい叔母がやって来た。
僕はこの叔母が大の苦手なのだ。

叔母はアパートでゴロゴロしている僕を一喝した。
「まったくあなたという人間は。」
その後、長いお説教が始まることを覚悟したのだが、叔母は意外な事を言った。
「あなたは考えすぎなのよ、考えすぎるから行動出来なくなっちゃうの。

考えすぎる位だから頭は本来良いはずよ、もう少しバカにおなりなさい」
僕の頭が良いだって?

意外な言葉だった。

そして、この本を読むようにと一冊の本を置いていった。

「5秒ルール」

行動を起こすときに、何も考えず
「5・4・3・2・1」と頭の中でカウントし5秒で動き出す。
直感的に行動しろということらしい。

 

何も考えたり悩んだりすることはない。

思い立ったら5秒以内に行動するだけなのだ。

 

直感的に行動するというところが、興味深かった。

自分にとっては素晴らしいルールに思えた。

ある程度は叔母の暗示にかかっていたのかもしれない。

 

その日から僕の人生が変わった。

 

朝、目覚ましを止める。

何も考えることはしない。

「5,4,3,2,1、ゴー」

サッと布団から飛び起きる。

そして朝のルーティン、トイレ、歯磨き、朝食。

服装も悩むことは無い。

面倒だった、清掃や洗濯だって、やらない理由を考えなくても良い。

「5,4,3,2,1、ゴー」

今までに無い僕の行動パターンだ。

 

生活が楽しくなった。

ネガティブ思考がなくなった。

いや、考えることをしなくなったのだ。

行動してしまえば、未来を考えるだけなのだ。

 

まもなく再就職も決まったし、彼女もできた。

 

それどころか、欲が出てきた。

僕はもっとできるはずだ。

もっと良い会社に転職し、高い給料を目指すことが可能ではないだろうか。

 

そのために、もっと自分のスキルを磨かなければ。

「5,4,3,2,1、ゴー」

英会話スクールを申し込み、自分で驚くほど短期間に英会話をマスターした。

ビジネス書も手当たり次第に読破した。

「あいつは決断が速い、行動が速い」

と言われるようになり、短期間で会社でも実力を認められるようになった。

 

すると、自ら行動しなくともヘッドハンティングの誘いが来るようになった。

「5,4,3,2,1、ゴー」

直観力で動くことにより、僕の人生は右肩上がりの素晴らしいものに。

英語とビジネススキルを活かして外資系企業に転職し、給料も驚くほど上がった。

 

今の僕は昔の僕と全くの別人だった。

 

5秒ルールを進めてくれた叔母の言葉に嘘はなかったのだ。

僕は、自分の頭脳をネガティブな部分に使っていたにすぎなかったのだ。

僕の優れた頭脳をポジティブに使えば人生は好転する。

叔母の言葉に嘘はなかった。

 

一日に何回も頭の中から声が聞こえる。

「5,4,3,2,1、ゴー」

その合図で僕は行動を起こす。

判断する。

結果がたとえ失敗したとしても、今の僕にはそれをプラスに変えるポジティブ思考が備わっている。

僕の取った行動に間違いはない。



週末、僕は買い物に出た。

街は人々でにぎわっている。

雑踏の中を、さっそうと歩く。

そんな時、突然の悲鳴が響き渡った。

歩道の人波が割れる。

乗用車が猛スピードで歩道に乗り上げ、こちらに向かってきた。

何人かが車に跳ね飛ばされている。

 

まずい、逃げなければ。

 

その時だ、僕の頭にスイッチが入った。

「5,4」

だめだ、もう車は目の前だ。でも体が反応しない。

「3,2」

はやく5秒経ってくれ、動けない。

だめだ、間に合わない・・・・

「1…」