ログイン 気ままにエンジョイライフ・ドットコム

ブロガー、アフィリエイター、フォトグラファー、マルチクリエイター目指して楽しく生きる!

【ショートショート・短編小説】 「黒猫と僕の不思議な関係」

はじめに

10月に投稿した短編小説「幸せを呼ぶ猫」を修正しました。

タイトルは「黒猫と僕の不思議な関係」

短編小説なので、タイトルで結末が分かる事を避けたのです。

主人公も「俺」から「僕」へ。

イメージを柔らかくしたかったのです。

文字数も約1700字から2700字へ。

小説全体が薄っぺらい感じがしていたので、少しボリュームを持たせてみました。

お読みいただければ幸いです。

 

f:id:masaogasan:20191005144413j:plain

「黒猫と僕の不思議な関係」

 

僕は37歳の独身。

これといった趣味もなく、アクティブな毎日を送っているわけでもない。

そのせいか、彼女という存在にも無縁のままだ。

 

そんな僕が、15年間続けている事が一つだけある。

毎回欠かさず同じ数字でロト6を買い続けているのだ。

もちろん過去1000円しか当たったことしかない。

だが、これだけ長く買い続けていると、この行為は人生の一部となり、買わないわけにはいかなくなってしまっているのだ。

 

土曜日。

5週間に一度、ロト6を買わねばならない日がやってきた。

15年間繰り返してきた行為。

駅前の宝くじ販売所に、ロト6を10回、5週間分を購入しに行く。

僕は、スニーカーを履き一人暮らしを続けているマンションを出た。

 

そして、その途中に事故は起こった。

 

宝くじ販売所の手前約100メートル地点、動物病院の前に差し掛かった時。

「あっ!」

僕ははとっさに大声を上げた。

 

黒猫が道路に飛び出した。

黒猫は道路の真ん中で、目の前に迫った大型トラックを見て動きを止めてしまった。

大型トラックがブレーキもかけずに通り過ぎる。

誰もが悲惨な光景を目にすることを覚悟した。

 

しかし、予想に反して、黒猫は無傷で道路の中央にうずくまっていた。

トラックの車体の下を、うまく通り抜けたらしい。

しかし、腰が抜けてしまったのか動こうとしない。

 

このままでは危険であることは目に見えている。

次の車が来る前に助け出さねば。

無意識のうちに僕の体が動いた。

ダッシュして、道路にうずくまる黒猫を抱き上げるとターンして歩道に駆け戻った。

 

「うっ!」

駆け戻った時に、道路の段差で思い切り右足首をひねった。

その時、「ビシッ」という嫌な音が足首からきこえた。

激痛が走る。

俺はラグビー選手がトライするように、黒猫を抱いたまま歩道に転がった。

 

猛烈な痛みで立ち上がることができない。

 

「大丈夫ですか?」

目を開けると、若い女性が僕をのぞき込んでいる。

美人だ。

が、それよりも足が痛い。

涙でかすむ風景、後ろに動物病院の看板。

 

「足、立てない・・・」

彼女は僕から黒猫を抱き上げると、

「救急車を呼びますね」

と言って動物病院に駆け込んでいった。

 

俺はアキレス腱を切断し、救急車で担ぎ込まれた病院に1週間の入院となった。

黒猫は、僕の退院まで動物病院で預かってもらうことに。

その間、体中にまとわりついていた蚤やダニの駆除もやってくれるという。

だが、黒猫は野良猫であって俺の猫ではないのだが・・・

 

入院して3日目の月曜日の夜、ロト6の当選番号発表日。

僕は、買いそびれたロト6の当選番号を病院のベットの上でスマホで恐る恐る確認した。

「当たるはずがない、当たらないでいてくれ」

そして、結果は起きてはいけない事が起きてしまった。

僕は、心臓が止まる思いだった。

 

当たっていたのである。

 

正確に言うと、買ったら当たっていた。

 

2億円、2億円が僕の人生からすり抜けて行った。

 

こんな事があって良いのだろうか。

同じ番号を15年間買い続けてきた僕の人生はいったい何だったのだろうか。

 

いつだったか、確かイギリスで同じような出来事があったことを思い出した。

人生で一度だけ買い忘れたロトの番号が当たっていたのである。

それを知った彼は、人生を悲観して自ら命を絶ったのだった。

 

今の僕には彼の気持ちがよくわかる。

僕が死ななかったは、彼より当選金額が安かったから・・・・なのだろうか。

いや、病院のベッドの上で動けなかったからに過ぎない。

 

放心状態のまま、入院期間は過ぎ去った。

今更ロト6を買っても当たる事はないだろう。

 

そして1週間後。

抜け殻と化した僕は、右足首をギプスで固定した状態で退院し、自宅のマンションに戻った。

同時に、あの黒猫もやってきた。

奴(雄だった)は、窓辺のクッションで気持ちよさそうにくつろいでいる。

無気力な僕を見つめ、満足した表情で

「ニャア」

と鳴いた。

 

僕が入院していた1週間の間に、奴は見違えるようにきれいになっていた。

黒い毛はつやつやになり輝いていた。助けたときは薄汚れていて気が付かなかったのだが、額には白いハートマークが。

そして4本足の先は白く、はまるで白いソックスか足袋を履いているようだった。

 

僕を「タビ」と呼ぶことにした。

 

そして「タビ」と僕の男同士の共同生活が始まった。

 

右足首はまだギプスが取れない。

幸い、しばらくは会社に出ることはできない。

2億円を手にすることができなかった僕の心がが立ち直るには、ちょうど良い休暇だった。

 

そんな僕の唯一の慰めは、世話になった動物病院の女性が様子を見に来てくれることだ。

言い忘れたが彼女は独身でまるで、「広瀬すず」のように愛らしい女性なのだ。

 

僕はこの時ばかりはロト6の2億円を忘れ、そして右足が治らないでほしいと願った。

 

そんなある日、彼女は「タビ」の写メを、俺の救出劇から一緒に生活することになった記事とともにSNSに投稿した。

 

「タビ」の写メがSNSで紹介されてから数日が経過した。

彼女の投稿は拡散され、瞬く間に「タビ」は世間に知れ渡るようになっていった。

「額のハート、かわいいー」

「幸運の猫ちゃん」

「タビの写メは幸運のお守り」

などと言われ、日本のみならず、世界中にフォロワーが広がっていった。

 

彼女は毎日僕のマンションを訪れ、「タビ」の写メを撮ってSNSにアップした。

もちろん僕と彼女の距離も縮まって行く。

そのことは、僕にとって2億円よりも嬉しい出来事だ。

 

フォロワー数はあっという間に100万を超え、毎日増え続けている。

 

「おはよー、タビいる?」

彼女は動物病院に出勤する前に僕のマンションに立ち寄って、「タビ」の写メを撮る。

そして、僕のために簡単な朝食とコーヒーを準備してくれるのだ。

そして、夕方も立ち寄ってくれ、夕食を作ってくれる。

時にはお酒を飲むときも。

 

僕の足が治ってからも、彼女の訪問は続いた。

 

そして今、

「幸せを呼ぶハートのマークの黒猫タビ」

はスターになった。

雑誌、ポスター、CM、テレビ、映画・・・・

「タビ」の姿をメディアで見ない日は無い。

 

僕と彼女は、「タビ」のマネージャーとして日々忙しく働いている。

そして、信じられないことに僕と彼女は結婚しているのだ。

 

それだけではない。

「タビ」の飼い主である僕たちの収入は、僕が当てることのできなかったロト6の金額を大きく超えるものとなっていた。

そのようなこともあり、「タビ」の人気は国際的になってきた。

 

でも、「タビ」は新しいマンションの、日当たりの良い窓辺のクッションの上でくつろぐのがお気に入り。

時々頭を上げ、僕たちの顔を見つめると満足そうに

「ニャー」

と鳴く。

 

まさに「タビ」は僕と彼女にとって幸運の猫ちゃんなのである。

 

*最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この小説は、小説投稿サイト

「小説家になろう」

「カクヨム」

にも投稿しています<m(__)m>