創作の森に迷い込んだカエルの話

写真家、小説家などの創作活動にあこがれるカエルが、ふとしたきっかけで富士山の麓にある創作の森に迷い込んでしまったお話

超ショートショートの不思議な世界 空を飛びたい

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「空を飛びたい」

 僕は空を飛んでみたいと思い続けていた。
勉強している時とか何かに集中しなければならないときに、特にこの気持ちが強くなる。それだけ僕の飛びたいという願望が強い証拠なのだ。
これだけ強い気持ちを持ち続けてきたのだから、絶対に空を飛べるはず。
 僕は実行してみようと決心した。
 よく晴れた日の午後、僕は大空を見つめて深呼吸。思い切り地面を蹴って飛び上がった。
 体が軽くなり、全身に風を受ける。見事に飛ぶことに成功したのだ。
 見下ろすと、遥か彼方ですっかり小さくなってしまった僕が手を振っている。
 えっ、そうすると今、空を飛んでいるこの僕って?

 僕の中にはもう一人の僕がいて、そいつはいつも空を飛んでみたいと馬鹿げたことを真剣に考えている。
 このもう一人の馬鹿な僕の存在に、長いこと悩まされてきたんだ。
 勉強など物事に集中したいときに、決まってそいつは顔を出す。
 頻繁に現れるので、精神科の先生に相談したりもしたのだが、馬鹿な僕を消し去る効果的な方法は見つからなかった。
 最後の手段、僕はもう一人の僕をその気にさせて、空に飛びたたせてしまおうと考えた。
 そしてある晴れた日の午後、もう一人の僕は僕の体から飛び立って遠い空のかなたへと旅立ったのだ。
 僕はもう一人の僕を、もう戻ってくるんじゃないと手を振りながら見送った。